ウィーケストリンクへの道
〜エピローグ〜


9月16日(月)

 え〜、本日の放送を持ちまして『ウィーケストリンク☆一人勝ちの法則』は終了いたしました。というわけで私のウィーケストリンクへの道も完全に断たれてしまいました。

 8月中旬くらいから薄々やばいなという感じはしていたのですが、やはり視聴率低迷により番組が打ち切りになってしまいました。海外では絶大な人気を誇るこの番組がなぜ日本では受け入れられなかったのでしょうか?哀悼の意を込めて、最後に検証したいと思います。

検証1:強力な裏番組の存在
 まず月曜日の夜7時という放送時間帯(関東)は、TBSで『関口弘の東京フレンドパーク II』という20%の視聴率を稼ぐ人気番組があり、また子供は日本テレビの『犬夜叉』→『名探偵コナン』というアニメのラインナップに釘付けにされ、そしてクイズ番組を好む年配層はNHKの『ニュース7』に奪われます。その中でまだこの番組が世間に浸透していないこの時期に、視聴率を少なくとも2ケタでキープするのは難しかったのではないでしょうか。ウィーケストリンクは多少ルールが複雑なため、最初はゴールデンタイムではなく深夜の時間帯で放送して、マニアックな知的層をファンにつければよかったと思います。

検証2:演出の逆効果
 番組開始時は、海外の『WEAKEST LINK』のコアな部分を忠実に再現し、なかなか玄人受けする作りだったのだと思うのです。悪く言えば視聴者に不親切なくらい画面が何にも加工されていませんでした。でも今となってはそれはそれでよかったのです。それがルールが解りづらい等の反省からか、徐々に効果音が増え、賞金のアップしていく様や投票の途中経過が解りやすい図で表されるようになりました。この辺までは確かに「改善」かとも思いましたが、問題文とその正解の表示、会話のテロップの垂れ流しまでくると画面がうるさくなり、いかがなものかと思うようになりました。
 次に気になりだしたのが、ネタばれのナレーションです。ウィーケストリンクの最大の売りは、クイズの正答率ではなく各個の投票によって、退場者が決まることです。これが過度のナレーションのため、次の退場者が容易に予想できてしまったのです。これでは犯人が最初からわかっているミステリー小説を読みたくないのと同じです。
 そして最大の演出ミスは芸能人の存在です。視聴者がウィーケストリンクに求めたのは、視聴者参加型だということです。もしかしたら次は自分が出ているかもしれないと思うことで、テレビの前で真剣にクイズに答えてみたり、戦略を立てて次に落とす人を自分なりに決めてみたり・・・という番組の楽しみ方があるのです。また知らない者同志が集まってバトルしていく過程で、ある人に感情移入して応援したくなったりするのです。それが末期に連続した芸能人大会ではすでに芸能界での上下関係が確立されており、そのしがらみの中では真のバトルは期待できませんでした。また、ただでさえ金持ちの芸能人が大金を手にしても、全く心が揺さぶられませんでしたし、退場していった芸能人は賞金が手に出来なくても当然ギャラは支払われるんだろうなと思うと、しらけてしまいました。芸能人を多く参加させる(レギュラー回でも8人中2人から3人へ増加)ことでカンフル剤となり、視聴率は確かに少しは上がったのでしょうけど、長期的視野に立てば絶対失敗だったはずです。

検証3:日本人気質
 私は比較文化論に造詣が深いというわけではないので断言は出来ませんが、ウィーケストリンクという番組の本質と日本人気質が合致しなかったのではないでしょうか。ラウンド毎にお互いの悪い点を指摘し合ったり、投票で一人を陥れたり、またその落とされた人間が悪態をついて去っていくという構図が、自己主張をあまりしないことを美徳とする古い日本人の美意識にいまいちしっくりこなかったのかなと感じます。強烈に他人を攻撃し、落とされたときも癇癪を起こしていた経済産業省のおばさんがいましたが、放送後の実社会での対人関係が悪化しないか心配したくらいでした。

 

 というわけで、ウィーケストリンク放送打ち切りを検証してみましたが、この番組のコアな部分はまだまだ面白味を含んでいると思います。また別の形でこの番組に逢えることを切に望みます。


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