司馬遼太郎

 私が読んだ司馬遼太郎の歴史小説作品の一覧です。

時代

作品名

主人公

あらすじ

私的短評

紀元前

項羽と劉邦

(上・中・下巻)

項羽

劉邦
秦の始皇帝の死後、天下は再び大乱の時代に突入する。その覇権を争った項羽と劉邦という二大英雄を通して、"人望"とは何かをきわめつくした物語。 中国からの農産物輸入は増加するばかり。そこで中国人の原型が知りたくて本書を読んだ。中国という国家の成り立ち、風土、物の考え方など大いに参考になった。

源平

義経

(上・下巻)

源義経
源氏の棟梁の子として生れ、源平合戦では輝かしい武功をたてたものの、兄頼朝から疎んじられ、非業の最期を遂げる判官義経の数奇な生涯。 軍事的才能にあふれながらも、政治的無知が災いした典型。日本の代表的悲劇のヒーロー。

戦国

安土桃山

江戸初期

箱根の坂

(上・中・下巻)

北条早雲
応仁の乱で荒れる京都で鞍作りをしていた伊勢新九郎(後の早雲)が、妹分の縁で駿河に下り、天性の智略で関東の覇王となる。 「環境が人を作る」という言葉を体現した人。元祖戦国大名。

国盗り物語

(全4巻)

斉藤道三

織田信長
油売りから美濃一国の大名となった「まむし」の道三とその娘婿であり天下統一の寸前に本能寺の変で明智光秀に討たれた信長の戦国絵巻。 下剋上の本質、天下統一への信長の独創性、そしてその裏にある狂気。本能寺の変は起こるべくして起きた・・・。

新史太閤記

(上・下巻)

豊臣秀吉
尾張の百姓のせがれから身を起こし、天性の知謀と人間的魅力で、天下統一を果たした英雄の生涯を描く歴史長編。 戦国大名数いれど、この人ほど惹かれる生き方はない。なお本書では晩年の暗い一面には全く触れていない。
豊臣家の人々

豊臣家の一族
秀吉の希有な栄達、そしてその後の豊臣政権の維持のためにより、その運命を翻弄された豊臣家の人間たちのそれぞれの生涯。 豊臣政権の継承システムが不完全だったために、家康の策謀にはまり多くの人間が不幸な末路をたどってしまった。ねねに実子が産まれていたらどうだっただろう?
覇王の家

徳川家康
徳川三百年の礎を隷属忍従と徹底した模倣で築いていった徳川家康と忠誠心の強い三河武士団の実像に迫る。 現代日本人が持つ気質や慣習が、三河の草深い田舎の松平郷の家風を源流としていることに驚き。

関ヶ原

(上・中・下巻)

徳川家康

石田三成
日本国内における最大の戦闘となった天下分け目の関ヶ原決戦の起因から終結までを克明に描き、戦国武将達の人間像を浮き彫りにする壮大な歴史絵巻。 この関ヶ原の結果がその後350年の歴史の方向を決めたと言ってよい。今年(=2000年)はその関ヶ原から400年ということで私はひとり旅に出ました。

城塞

(上・中・下巻)

大坂方

徳川家康
秀頼、淀殿を挑発して開戦を迫る家康。大坂冬の陣、夏の陣を最後に陥落してゆく大坂城の運命に託して豊臣家滅亡の人間悲劇を描く。 これを読んでいた頃にちょうどイラク戦争があったので、米国=家康、イラク=大坂方と置き換えてみると、多くの共通点があった。

夏草の賦

(上・下巻)

長曾我部元親
土佐の片田舎に興り、四国全土を席巻したが、信長、秀吉によって再び土佐に押し込められてしまった風雲児の情熱の生涯。 野望への情熱を持ち続ける事の大切さを再認識。

播磨灘物語

(全4巻)

黒田官兵衛
播磨の小寺氏の一番家老から秀吉の軍師となり、天下統一を陰で支えた、稀代の器才黒田官兵衛(如水)の生涯。 豊臣政権の成立に大きく貢献しながら、その才気のため後年は秀吉から疎んじられた男の生き様は興味深い。
戦雲の夢

長曾我部盛親
土佐22万石の大名長曾我部盛親は関ヶ原の戦いに敗れ、牢人に身をやつしたが、再起を賭けて遺臣達と大坂の陣に立ち上がる。 関ヶ原前夜、江州水口の関を越えられなかった長曾我部家は滅び、越えた山内家はその土佐を貰い、幕末まで栄えた。運命というものか・・・。

功名が辻

(全4巻)

山内一豊
織田家中でうだつの上がらぬ伊右衛門(後の一豊)が、妻千代の内助の功で土佐一国の国主になるまでの痛快物語。 結婚するなら千代のような利口な女性がいいなあと思った。読み物としても面白い。
尻くらえ孫市

雑賀孫市
鉄砲3千挺の巨大な威力で知られる紀州雑賀党の若き領主孫市が、信長に対抗していく痛快小説。 戦国大名とは異種の地侍としての孫市の底抜けの楽天主義に共感する。

軍師二人

(他7編収録)

真田幸村

後藤又兵衛
天稟の智将・幸村と千軍万馬の勇将・又兵衛の、名将なるが故の葛藤と互いの深い洞察を大坂冬・夏の陣を通して語る短編。 二人の軍事の天才を擁しても、時勢には逆らえず大坂方は滅んだ。両人ともそれぞれにふさわしい死に場所を探していた様に思う。

馬上少年過ぐ

(他6編収録)

伊達政宗
戦国に遅れて僻地に生まれたが故に、奥羽王の地位までにしか昇れなかった政宗の生涯を描いた短編。 高校生の頃、大河ドラマで「独眼竜政宗」を観て以来の政宗ファン。父や母との苛烈な関係は見逃せない。
梟の城

葛籠重蔵
忍者の生き甲斐をかけて天下人秀吉の命を狙う重蔵。己の立身のためにその重蔵を捕らえようとする五平。2人の忍者を通して忍者の実像に迫る長編小説。 直木賞を受賞した「司馬作品」の出世作。初期の作品だけに、史実に忠実ながらも小説的要素の強い作品。最後に「石川五右衛門」の登場には参った。
風神の門

霧隠才蔵
豊臣・徳川の対立が激化する時期、風雲に乗じて都に出た伊賀の忍者霧隠才蔵の悲哀を通して、忍びの世界を現代の眼で捉えた小説。 歴史の表舞台には出てこない忍者から見た大坂冬・夏の陣は他と趣が違っていてよい。

最後の伊賀者

(他6編収録)

野島平内
(ヒダリ)
驚異的技能と凄まじい職業意識を持ち、戦国の武器として使い散らされた伊賀忍者の、安寧に向かう世に仕掛けた最後の戦い。 名も無き忍者が裏で歴史を転回してきたのは事実だが、戦無き世ではその存在はもはや無用となっていた。

幕末

維新

世に棲む日日

(全4巻)

吉田松陰

高杉晋作
ペリー来航以来騒然とする中、倒幕への主導力となった長州藩の思想的原点の松陰、その後継者たる高杉の青春群像を描く。 歴史の大転換には「思想的基盤」と「狂気的行動」が必要と思い知らされた。

花神

(上・中・下巻)

大村益次郎
周防の村医から一転して倒幕軍総司令官となり、わが国近代兵制の創始者となった大村益次郎の波乱の生涯を描く長編。 ついに最期まで「技術者」としてのみ生きた生き様に共感。戦術は必要条件として戦略が勝負を決することを痛感。

十一番目の
      志士

(上・下巻)

天童晋助
高杉晋作によって刺客に仕立てられた天童晋助が長州・京・江戸・大坂を舞台に、多くの女と関わり合いながら暗殺の日々を繰り返す。 天童晋助は架空の人物。しかしその働きの根底には、史実に沿った背景があり、下級民にとっての幕末動乱を理解するのに最適な読み物。

竜馬がゆく

(全8巻)

坂本竜馬
幕末、土佐藩を脱藩し、日本の維新のために奔走する竜馬の劇的な生涯を描く。 竜馬が脱藩したのが28歳、自分が就農したのが28歳になる年。組織からの独立を決心させた本。20歳までに必読の書と、今は思う。

燃えよ剣

(上・下巻)

土方歳三
幕末の動乱期を新選組副長として剣に生き、剣に死んだ土方歳三の華麗なまでに頑なな生涯。 政治に関心を持たず、戦に生きた男の悲哀。司馬氏が急逝した直後、最初に読んだ司馬作品。これで司馬の世界の虜になった。
新選組血風録

新選組
幕末の大動乱期に剣に生き剣に死んでいった新選組隊士一人一人の哀歓、生死のかたちを冴え冴えと浮彫りにする短編集。 幕末の京で浪士の殺戮集団として恐れられた新選組も、実際は各隊士ごとに思想・目的に差違があり、まさに乱世の時代だからこそ産まれた複雑な存在であった。
酔って候
 酔って候
 きつね馬
 伊達の黒船
 肥前の妖怪
 以上短編4編

山内容堂
島津久光
伊達宗城
鍋島閑そう
幕末のいわゆる「賢侯」たちが、歴史の風当たりを最も激しく受け、それによって痛烈な喜劇を演じることになる。 開国し緩やかな改革を目指した賢候たちも、維新の時流に流され、ついには自らの特権すら失ってしまう皮肉さ。

(上・下巻)

河井継之助
開明論者であり、封建制度の崩壊を予見しながらも、最後まで越後長岡藩家老として武士道に生きねばならなかった矛盾の生涯。 日本農業の崩壊を予見しながらも、最後まで農民として生きようとしている人がどっかにいたなあ。

幕末

(短編12編)

幕末の暗殺者
幕末におこった12の暗殺事件を描く連作小説。 暗殺では革命は成就しない。
王城の護衛者
 王城の護衛者
 加茂の水
 鬼謀の人
 英雄児
 人斬り以蔵
 以上短編5編

松平容保
玉松操
大村益次郎
河井継之助
岡田以蔵
官軍・幕軍問わず、激動の幕末に運命を翻弄された5人の男達の短編集。 必ずしも自らの意志とは関係なく、それぞれの人生の結末を迎えた男達。彼らがもし違う時代、違うポジションに産まれていたら・・・。

胡蝶の夢

(全4巻)

松本良順
島倉伊之助
関寛斎
巨大な組織・江戸幕府が崩壊してゆく激動期に、時代が求める「蘭学」という鋭いメスで身分社会を切り裂いていった医者たちの生涯。 江戸幕藩体制=身分制社会の崩壊を方外(階級外)の存在である医者の視点から描いているのが興味深い。医史としても読み応えがある。

明治

翔ぶが如く

(全10巻)

西郷隆盛

大久保利通
征韓論から西南戦争の終結まで、新生日本を根底から揺さぶった激動の時代を、西郷と大久保という両巨魁を中心に描く長編小説。 倒幕には執拗に密謀を施した西郷が、この時期は全くそれをしない。武士階級を撤廃してしまったことの罰をひとり受けるように・・・。

坂の上の雲

秋山好古
秋山真之
正岡子規
日露戦争で日本騎兵を育成しコサック騎兵を破った秋山好古、バルチック艦隊を日本海海戦で全滅させた参謀・秋山真之、日本の近代文学に大きな足跡を残した正岡子規−3人の松山出身の若者たちを中心に、明治の群像を描く長編小説。 国家存亡の危機を迎え、まさに国民戦争となった日露戦争。国力は貧窮を極めたものの戦略・政略でようやく勝ちをおさめた。しかしこの勝利の結果が昭和の軍国主義の暴走につながっていってしまう。司馬氏が時期尚早という理由でドラマ化を断ったという意味が何となくわかった。
殉死

乃木希典
日露戦争で英雄として称えられ、その後も多くの栄誉を受けた乃木が天皇崩御に際し、殉死したのはなぜか?その内面を浮き彫りにする。 日露戦争の英雄として捉えられている乃木将軍が実は戦さ下手であったという視点が面白い。

 

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